ソルトちゃんの19歳次男。
不登校歴6年以上。
家の中にこもって、人とのやりとりを拒んでいたが、この春になって、気分が上向いてきたようで、あれやこれやと目が外に向き、人のやっていることに関心を持つようになった。
結構なことである。
今日、はじめてのアルバイトに朝からいそいそと出かけて行った。
引越屋さんのお手伝いである。
【ソルトちゃんの次男、アルバイトを見つけてきた経緯↓】
https://saltchan.hatenablog.jp/entry/2022/04/16/002708
昨日、面接を受け、翌日の今日、早速、シフトに入ってほしいと言われたらしい。
しかし、肝心の時間や集合場所を告げられておらず、前の日の晩から、やきもきしていた次男。
今朝になってから、お呼びがかかったらしく、朝の8時ぐらいにお迎えが来た。
勇ましく出かけていく。
昨日、買った真っ白い安全靴を履いて、出ていった。
1時間もしないうちに、
「思ったよりブラック、逃げるべきだと思う」
と、本人からLINEが。
引越屋と言えば、重労働の代表。
加えて今は繁忙期。
朝、昼間、夜と、引越の予定が詰まっていて、過密スケジュールであろうし、多少の無理は仕方がなかろう。
頑張れよ次男、と思うソルトちゃん。
出かけてから5時間ほど経って、「今逃げてきた」と、2度目の報告LINEが。
あれあれ。
本当に逃げ出したのかいな?
黙って逃げ出したのかな?
次男は、小学校や中学校の頃、学校を黙って飛び出して外に出てしまうということを、数回やらかしている。
どうやら、決まり・規則のある堅苦しいところで、意に沿わぬことを強制されたり、画一的なことを押し付けられたりすることに異常な苦痛を覚えるようである。
母親の私は、学校の先生から、仕事中に電話がかかってきて、報告を受けるたびに、「なんで普通の子と同じようにおとなしくしていられないのだろう」と思うと、心の中が、「 ギューッ」となった。
最初は、次男を問いただすようなことをいつもしていた。
しかし、息子を叱り続けるのもなんだか不憫になってきて、しまいには次男のことを「トビー」とあだ名した。
その事態を、家族と笑い飛ばすようにした。
これを、「発達障害では?」という人もいた。
昨年末になって、本人同意の元で、メンタルクリニックで心理検査を受けるべく、検査室に入ったところ、数分でそこから飛び出してきた。
その時は、何度聞いても、その理由を言わなかったが、どうも、あとから聞くと、検査の質問が面倒になってきたらしい。
やっぱり、トビーの性格は、相変わらず、トビーのままであった。
興味のないこと、意に沿わぬことを、人から上から目線でやらされること、縛られることが、嫌いで我慢ならないなのである。
とは、言っても、次男は怠け者ではない。
家の中では、家族のために料理を作ったり、洗濯、買い物など、様々な家事をこなす。
言われなくても、自主的に考えて、タイミングよくこちらが望むことをやってのける。
自宅に宅急便がやってくると、真っ先に玄関先に飛び出して受け取りをしてくれる。
結構、気が利くなぁ…と、我が子ながら感心する時もある。
また、至極礼儀正しい言葉遣いもできる。
相手を、不愉快にさせることのない最低限のやりとりは、客観的に見ていても、ちゃんとできていると思う。
だから、社会に出て、ある程度の仕事は、きちんとやってお役に立てるだろう、と、母ソルトは思っていた。
2度目のLINE連絡の後、2時間半ほど経った15時半頃、次男、帰宅。
バタバタと家の中に入ってきた。
普段は、静かでおとなしいのであるが、結構興奮した様子。
天気の良い屋外にいたせいか、やや日焼けしている。
引越屋さんのリーダーから、「帰っていいよ」と言われたらしい。
よかった。
トビーでは、なかった。
クビか…。
次男の話を聞く。
どうやら、そのリーダーから、何度も「頭悪いなぁ」と言われたらしい。
リーダーの思う通りに動けなかったかららしい。
そりゃそうだろう。
事前に、研修とか、オリエンテーションがあったわけでもない。
昨日、面接を受け、作業についての説明や、何をどう流れているのかというレクチャーもなく、いきなり翌朝、呼び付けられ、現場に連れていかれて、「さぁ、やれ」と言われても、それは分からんでしょうに…。
OJTができている現場仕事だったのかどうかは、次男の話だけでは、不明。
どうやら、作業員間の会話で言われているならまだしも、引っ越し先のお客さんの前でも「頭悪いなぁ」と言われたらしい。
次男、そのリーダーに対し、「お客さんの前でそういったこと言わないでください」と抗弁したらしい。
すごいなぁ、たいしたもんだ。
ソルトちゃんなら絶対そんなこと言えず、黙って口ごもるのに。
そして、次男は、現場、お客さんの引越先から、最寄駅まで1時間ほど歩き、引越屋さんの事務所へ電車に乗って行き、その日のお給料を受け取ってから、帰ってきたという次第である。
受け取った金額は、約7000円。
すごいなぁ、次男。
はじめての自分で稼いだお金。
安全靴とか軍手とか、交通費とかでお金を使ったので、その半分は費用となっているが、黒字である。
儲けはある。
次男は、「もう二度と行かない、辞める。明日電話をする」とのたまう。
「面接でも、書類を書いただけで、ろくに聞いてこないやり方で採用する会社だから、その程度の会社なのだ」とも。
今日の引っ越しのシフトで御一緒したアルバイトのお仲間が、「今日のリーダーは、ハズレだ」と次男に言っていたらしい。
今日、お世話になった引越屋のリーダーは、心ない言葉を浴びせることがら普段からのマネジメントのやり方であったようである。
まぁ、繁忙期だから心に余裕がなかったというのもあるのだろう。
勇気を出して最初に行ったアルバイト先と出会いが、そういったものであった事は、誠に残念ではあるが、次男はこの一連のアルバイト探しの経験により、様々な世界を見ることができ、かなりの経験値を上げたと思う。
本当によくやった、がんばったねー。
心ない大人の言葉に、めげずに、次に向かってどんどん進んでくれることを期待したい。
次男、家族のグループLINEに、こう書いてきた。
「引越し屋はやめます。社会のお荷物がお荷物を運ぶ仕事でした。」
おっ、中々文章書くセンス、あるじゃん。
(ここ、笑うところでは、ないか…)
今夜は、次男の大好きなすき焼きにすべく、いそいそと材料を揃えるソルト母ちゃんであった。