学校生活や就職活動の波についていけず、先日来からやる気をなくしてしまった長男。
「生きるのが辛い」「なんでこんなにやる気が出ないのか」と、悩みをポツリポツリと申告し、無表情で、部屋の中で1日中、過ごす日が続いている。
過去の経験から、叱ってハッパをかけるのも逆効果だし、とは言え、放置しておくのもなんだし、向き合い方に悩んでいるところである。
このままでいると、「この先どうなるのか」と、親の私が、暗い気分になってくる。
今夜、仕事から帰宅して、家の中の廊下を歩いていると、長男の部屋から、大きな話し声が聞こえてくる。
いつになく、大きな張りのある声である。
「何をしゃべっているんだろう?」と、立ち聞きはいけないと思いながらも、長男の部屋のドアに耳を寄せて、会話の内容を聞き取ろうと試みる。
内容からして、誰かとオンライン会話ができるシステムを使って、オンラインゲームの事を、語り合っているようである。
ゲームの攻略法のことなのか、ゲームを作ることのか、その辺りは、判然としない。
そこそこ真面目な感じで会話をしている。
いつもの生気のない長男の様子とは打って変わった声の調子である。
いっぱしの感じで喋っている。
長男は、学校でゲームのプログラミングを学んでいる。
ゲームを作ることができるから、それなりに深い話ができるのだろう。
やる気をなくしても、やはり、ゲームは好きなのである。
「なーんだ、『ヤル気がない、人とのやりとりが苦痛、生きている意味を感じられない』とは、言っているものの、四六時中そう考えて悩んでいるわけでもないのだな」ということに気づく。
引きこもりの子供が、家族とは、違う誰かとの会話を楽しむことができている。
たわいもないことだろうが、親としては、それを知ることができて、ちょっとほっとする。
親が思っている以上に、子供はたくましいのかもしれない。
その後、長男部屋から出てきて夕飯を食べ、私のところに寄ってきた。
「枕カバー、どこにしまってある?」
どうやら、只今、寝具のシーツ・カバー類を替えることに、気が向いているようである。
どん底の頃は、シーツなど交換しなくても全く平気だったのに…。
良い傾向である。
誰かさんとの会話により、意識が上向いて、ヤル気が出てきたのかもしれない。
動けば、気持ちは前向きになるのかもしれない。
親としては、ちょっとほっとする。
そんなようなことの積み重ねで、少しずつ少しずつ、浮上してきて欲しいものである。