日本の古い話で有名な天の岩戸。
天照大神がお隠れになったという伝説のあの岩穴です。
先日、たまたま三重県伊勢市に訪問した時、その天の岩戸がある場所を知ったのです。
あー、実物があるんだと思い、ものすごく興味をそそられました。
地図で調べてみたら、山の中。
迷いましたが、行ってみました。
自家用車での予定も立てずに赴いた気ままな一人旅だったので、その点は自在です。
車で伊勢市内から志摩市に向けて、約10キロ、約20分ほど山の中の1本道をうねうねと走ったところにあります。
深緑色の水をたたえた湖があるところで、脇道にそれ、更にうねうねとした細い道を湖沿いに、さらに、 そこから続く川沿いに走り続けると、天の岩戸に続く山道にたどり着きます。
駐車場があるのでそこに車を止め、後は徒歩で登ります。
駐車場には、お手洗いはありますが、お土産屋さんなど、人が賑わうような要素となるお店は全くありません。
脇道にそれた山の中にあるせいか、この辺りは車も人もまばらです。
私が行った時は、土曜日でしたが、駐車場には車が4〜5台ほどでした。
車を降りてから、静かな山の中の舗装された坂道を10分ほど歩いて登ると、天の岩戸に到着です。
あれれ?その岩穴からは、水が湧き出て滔々と流れています。
水が湧き出てくる穴では、とても天照大神様が隠れていらっしゃったとは思えない感じです。
その昔は水が湧き出ていなかったのかしらん…?
その一帯は、神社のような感じになっていました。
湧水はすぐ下で小さな滝となっていました。
そこは、滝に打たれて修行するための場所もしつらえてありました。
ここは、どうやら、神聖な場所としての位置づけとされているようです。
辺りはとても静かです。
滝の水の流れる音、そこから続く川の水の音が響いているだけのところです。
山の中の木々は、杉だと思いますが、まっすぐに高くそびえ立ち、辺りの空気を静かで凛としたものにさせるのに一役買っている感じです。
こういう雰囲気、空気感を、非常に安っぽい言い方ではありますが、「マイナスイオンが漂っている」と表現するのでしょう。
歩いていると、普段、ささくれだってざわついている気持ちが静かになっていくのを感じます。
思い切って来てみて良かったと、歩きながらつくづく思いました。
雨の岩戸から、さらに上に上る道がありました。
この先にも洞穴があるようです。
道は舗装されておらず、細い山道になっていましたが、せっかくですから、さらに登ってみることとしました。
しかし、人が全くいない状態になってきたので、あまり静かなものですから、かなり心細くなってきました。
このまま動物や変質者が出たらどうしようか、とふと臆病風に吹かれて心配になりましたが、神様のいるところだから、と思い直し、勇気を出して歩き続けました。
歩く先のほうに、小さな子供を連れた家族連れの賑やかな声が聞こえたのでホッとしつつ、洞穴までたどり気づきました。
そこも天の岩戸と同じ風穴でした。
こちらの穴の方が、よっぽど神様が隠れた天の岩戸の風格があります。
この静かな山の中で、一人でしばらくたたずんで、穴の中を覗いてみました。
すると、「ウォーン」という微かなうなり声が聞こえます。
風穴だから、空気の通る音だと思いましたが、やっぱり何だか怖くなり、あわてて、すたこらさっさと下り降りました。
ちょっと怖い思いをしましたが、それでも伊勢の神様の住む山の中、と思うと、なんだかとてもありがたい気分になります。
そして木々がスックと高くそびえ立つ山の中にいると、自分自身の心と体が澄んでいき浄化されていくような心持ちとなるので、不思議なものです。
伊勢は、神様の宿る地なんだなぁ、、と、感じました。
この感じたというのは単なる自分の思い込みなのか、それとも何か自分の思いを超えた不思議なものがそう感じさせるのか、私にはよく分かりませんが、それでもとても良い体験ができたと思いました。
会社での仕事や、家での家事に日々疲れ切っている自分に取って「魂の洗濯」が出来た、と、しみじみと思えました。
最後に、ここを訪れる方へ、アドバイスです。
最後は、細い細い山道を歩くので、スニーカーを履いて行かれることをお勧めいたします。